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非同期性 - Sorenのゲームデザイン論

すとすての作者Soren Johnsonのブログに掲載されたゲームデザイン論。すとすての特長である「非同期プレイ」について考察している。原文はこちら。以下翻訳:



ゲーム開発者コラム6:非同期性
2009/7/1 Soren Johnson

2009年3月にGame Developer magazineに掲載された物の再掲:

コンピュータゲームには、ボードゲーム・カードゲーム・室内ゲームなどの伝統的ゲームには無い特徴がある。リアルタイム性だ。コンピュータはゲーム中で起きる複数の事象を同時に処理できる。実際の所、世界初の対戦用コンピュータゲームである「ポン」は、伝統的なゲームでなくリアルタイムなスポーツ(卓球)を元にして作られている。これら初期のゲームは必然的に同期プレイ用であった。即ちプレイヤーたちは同時にゲーム台に向かい、同時にゲームに参加する。爾来、同期プレイ方式は対戦用コンピュータゲームの王道となった。そしてオンラインゲームが登場すると、そのままの方式が離れた場所にいるプレイヤーの間でも可能になった。

同期プレイ方式はゲーム業界に深く根付いた伝統である。Doom, StarCraft, Madden, EverQuest, その他諸々・・・ほとんどのゲームデザイナーは、同期プレイがデザインにおける選択肢の1つに過ぎないという事にすら気付いていない。非同期プレイという別の道も存在するのだ。即ちプレイヤーたちはそれぞれ好きな時間に参加し、少しずつゲームを進行させる。この方式は伝統的なボードゲームの世界にも存在した。例えばチェスやウォーゲームの郵便対戦だ。中でも最も成功したのは「ディプロマシー」だろう。このゲームでは裏切りや秘密外交が横行し、それらが勝利の為の手段として確立されている。こうした行動は同期プレイでは不可能だ。Webが登場するとディプロマシーの対戦サイトが多数立ち上げられ、同様の非同期プレイがオンラインで行われる様になった。

ディプロマシーが非同期プレイ用ゲームとして成功した理由の1つは、これが同時ターン制を採用している事だろう。つまりチェスの様な交互ターン制ゲームと違い、全プレイヤーの行動が同時に解決される。プレイヤーは自分の行動計画を他の者には伏せたままゲームマスターに通達し、マスターは全員の行動が届いた時点で綿密なルールに従い紛争を処理する。この方式は非同期プレイに最適だ。何故なら、「全ての」プレイヤーが「全ての」ターンに意思決定を行えるからだ。Riskやモノポリーなどの旧いゲームで非同期プレイを行うと、ほとんどのターンを他のプレイヤーが駒を動かすのを待って過ごすために、ゲーム進行が耐えられないほど遅くなってしまう。ゆえに、非同期プレイには非同期プレイに適したゲームシステムが必要なのだ。待ち時間を極力減らし、参加時間を極力増やすシステムが。



忙しい人にも参加できるゲームを

非同期ゲームは同期ゲームに無い特長をいくつも備えている。第一に、他のプレイヤーを待たせる事を心配する必要が無い。4~5人のプレイヤーがゲーム卓を囲み、優柔不断な者が行動を決めるのを苛々しながら待つ・・・こんな事は非同期ゲームでは起こらない。1ターンに1時間かけてもゲームの流れを止める事にはならないのだ。次に、非同期ゲームはまとまった時間の取れない忙しい人や、異なるタイムゾーンに暮らす人も参加できる。ゲーム体験の豊かさはそのままだ。MMOでは5時間がかりの40人参加セッションなどがあるが、ほとんどの社会人はそれに参加するだけの時間が取れない。一方非同期ゲームでは、プレイヤーがそれぞれ1日に15分だけ時間を見つけて参加すればマルチプレイが成立する。例えばディプロマシー。イギリス担当のプレイヤーは朝に行動計画を送信し、フランス担当のプレイヤーは夜に送信する。あるいはその逆。どちらでも都合の良い様にできる。

現行のオンライン非同期ゲームにはディプロマシーより一歩進んだプレイ方式を提供している物もある。ディプロマシーには、誰かが行動計画を出さないまま放置するとゲームの進行が止まってしまうという問題点があった。新方式ではリアルタイムなゲーム進行をこれに加える事で問題を解決している。一定時間が経過すると、プレイヤーが行動したか否かに関わらずゲームがそのまま進行するのだ。これは多くのファンタジースポーツゲームで採用されており、一度リーグが始まるとプレイヤーのログイン状況に関わらず日々ゲームが進行する。2週に1回ログインして状況を確認するプレイヤーもいれば、毎日数回ログインしてトレードに出されている選手がいるか調べるプレイヤーもいる。そしてそのどちらも完全な参加者なのだ。この方式が優れている事は、現在のオンラインファンタジースポーツの人気を見れば明らかである。研究によると、2007年時点でファンタジースポーツリーグの参加者は北米だけで3000万人を超えている。実際、ファンタジースポーツは世界で最も人気のあるマルチプレイヤーゲームジャンルなのだ。プレイ時間の長短に関わらず全てのプレイヤーが共に参加でき、楽しみを共有できる。一般的なRTSではこうは行かない。



Webに目を向ける

旧来のゲームのメール対戦以外にも、本格的なゲームにおける非同期プレイの例はいくつか存在する。Civilization4にはPitBossという仕組みがある。これを使えば最大32人のプレイヤーがマルチプレイに参加でき、それぞれ好きな時間にログインしてゲームを進める事ができる。同時ターン制を採用し、ターンタイマーは24時間。従来困難だったCivilizationの大規模・長期間マルチプレイが可能になる。World of Warcraftはソロプレイ用コンテンツが充実しており、これも非同期プレイの一形態と言えよう。湧き待ちや誘われ待ちの労無しにMMOを楽しめる様になったのだ。プレイヤーランキングや達成表示の類は、従来型のシングルおよびマルチプレイヤーゲームに非同期の交流手段を付加してくれる。同じセッションに参加しないプレイヤーとも相互関係が生まれるのだ。

とは言え、独創的な非同期プレイ用ゲームの大部分はWebをプラットフォームとしている。Webは当初から非同期交流を前提に作られた物だ。Wordscraperをはじめ、多くのFacebookゲームは簡素なターン制を採用し、ソーシャルネットワークの要素を利用する事で対戦を容易にしている。1ゲームにかかる時間は数時間から数ヶ月まで参加者のログイン頻度次第で様々だ。更に非同期MMOも既に存在する。FacebookゲームではMob WarsやKnighthood、独立サイトではNile OnlineやTravianがある。

この手のゲームではプレイヤーは大きな世界の中で何かを育てて行く。それによって名誉を得たり、あるいは単に育成自体を楽しんだりする。Nile Onlineの場合、プレイヤーはナイル流域の都市の1つを受け持ち運営する。それぞれの都市は木材・金・油などの特産品を持っており、都市が成長するとそれらを近隣の都市との間で売買できる様になる。都市の成長度合いはゲーム内ランキングに表示される。偉大な記念碑を建造する事で更に名声を高める事もできる。



相互作用の意味は?

これら非同期MMOに1つ疑問を投げかけるとすればこうだ。確かにマルチプレイヤーゲームの長所をいくつか備えているが、結局の所は時々ちょっかいの入るシングルプレイヤーゲームではないのか?プレイヤー間の相互作用は比較的弱く、システムの大部分は自分の領地をコツコツ開発する事に関する物である。隣近所を気にする必要はあまり無い。というのも、このタイプのゲームではプレイヤーが他のプレイヤーに与える影響を大きくする事が難しいのだ。相互作用システムはプレイヤーの一方がログインしていない事を前提に作成される。もし誰かが他のプレイヤーの都市を焼き払う事ができたら?その時攻撃を受けるプレイヤーは寝ていたとしたら?朝起きたら自分の都市が丸焼けになっていて、それを防ぐチャンスすら無かったというのは楽しい体験だろうか?

そういう具合で、ほとんどのゲームは他のプレイヤーの行動から受ける影響を減らす選択肢が存在する。例えばTravianでは、岩の隙間に資源を隠しておいて攻撃を受けても奪われない様にできる。そもそも資源強奪の様なゼロサムな相互作用は非同期プレイと相性が良くない。ゲームにおける影響があまりに大きければ、各自が好きな時にログインできるという非同期ゲームの長所が失われてしまう。これらのゲームデザインは並列関係の競争に力点を置くべきだ。遺産の建造競争とか、経済支配の確立などである。

しかし非同期のMMOでゼロサム相互作用を中心に据えつつ、それに伴う問題を解決している例もある。Duelsだ。キャラクターのレベルを上げて他と戦うファンタジーMMOだが、戦いの際に両方のプレイヤーがログインしている必要は無い。例えば戦士が魔法使いに決闘を挑むと、魔法使いがそれを承諾した時点で実際の戦闘が始まる。このシステムならゼロサムな紛争を行いつつ、ゲーム部屋探しや途中退場などの不快な要素を排除できる。だがこれはまた別の問題を抱えている。決闘の際にプレイヤーがログインしている必要が無い為、戦闘中にはいかなる意思決定も行われない。戦闘はブラックボックスになり、2人のキャラクターが中に入って結果だけを吐き出す代物と化す。「面白いゲーム」が「面白い意思決定」の集まりだとすれば、Duelsはその機会をプレイヤーから奪う事で袋小路に陥ってしまっている。



非同期ネイティブなゲームを

正直な所、非同期ゲームとそのデザインの歴史はまだ始まったばかりである。されど前途は明るい。同期ゲームに参加する時間のある者は非同期ゲームにも参加できるが、逆は真ならず。つまり非同期ゲームは同期ゲームより多くの潜在顧客を有している。今後の課題は同期ゲームシステムの模倣を止め、最初から非同期プレイの為に作られたシステムを確立する事である。

最良の事例はParking WarsというFacebookゲームだ。このゲームのプレイヤーは、他のプレイヤーの所有する道路に違法駐車をして金を得る。駐車された側は、それを見つけて取り締まれば金を巻き上げる事ができる。よって最良の戦略は他のプレイヤーがオフラインの時間帯を調べ上げ、そこを狙って違法駐車をするという物だ。そして対抗戦略は言うまでもなく、意外な時間にログインしてそれを取り締まる事である。つまりこのゲームは「プレイヤーがオフラインの時間をゲーム内容として活用している」と言える。先に挙げた他の非同期ゲームと違い、このシステムは同期プレイでは全く機能しない。将来の非同期ゲームデザイナーはこれを見習うべきである。今や時代は変わった。同期ゲームを改装して非同期プレイに押し込むのではなく、非同期プレイならではのゲームを作る時が来たのだ。

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